勤怠システムの丸め設定の画面と手元のタイムカードを見比べ、切り捨ての単位に気づいて考え込んでいる中小企業のひとり労務担当者

労働時間の端数処理|15分単位の切り捨てを1分単位に直す手順

「うちの勤怠、15分単位で切り捨てになってる」。

給与計算のついでに設定画面を開いて、ふと気づく。前任者から引き継いだときからそうだったのか、システムの初期設定がそうだったのか、もう誰も覚えていない。悪気があってそうしたわけではなく、ただ、誰も見直す機会がなかっただけ。——そういう会社は、実はかなり多いと思います。

気づいた今日が、いちばん早いタイミングです。この記事では、労働時間を何分単位で数えるのが原則なのか、例外として認められている端数処理はどこまでなのか、そして今の運用をどの順番で直していけばいいのかを、一緒に整理していきます。

結論:労働時間は1分単位で把握し、1分単位で賃金を計算するのが原則です(労働基準法第24条の賃金全額払いの原則)。例外として端数処理が認められているのは、「1か月の合計」に対する丸めだけで、具体的には①1か月における時間外労働・休日労働・深夜労働のそれぞれの合計時間数について30分未満を切り捨て・30分以上を1時間に切り上げる、②1時間あたりの賃金額や割増賃金額の円未満を50銭未満切り捨て・50銭以上切り上げる、の2つです(行政解釈・昭和63年基発第150号)。1日ごとに15分単位で切り捨てる運用は、この例外に当てはまりません。 ただし、労働者に有利な方向(切り上げ)に丸めているぶんには問題になりません。今の設定が「切り捨て」なら、1分単位に直すか、少なくとも切り上げに変えるところから始めれば大丈夫です。

進め方は、この順番だと迷いにくくなります。

  1. 勤怠システムの丸め設定を開いて、「単位」と「切り捨て/切り上げ」を確かめる
  2. 1人ぶんでいいので、1分単位で集計し直して差を見てみる
  3. 就業規則・給与規程に書かれている端数の条文を読み合わせる
  4. 直す時期(いつの給与計算から1分単位にするか)を決めて、社内に伝える

何が起きているか:丸めていいのは「1か月の合計」だけ

労働時間の端数処理がややこしく感じるのは、「端数処理そのものが全部ダメ」なわけではないからです。認められている場面と、認められていない場面がはっきり分かれていて、その線引きが「1日ごとか、1か月の合計か」にあります。

まず土台になるのが、労働基準法第24条の賃金全額払いの原則です。働いた時間に対する賃金は、全額を支払う必要があります。1日8時間を超えて13分働いたなら、その13分ぶんの割増賃金が発生します。だから原則は1分単位です。

その上で、行政解釈(昭和63年基発第150号)が、事務の簡便を目的とした端数処理として次の範囲を認めています。

ここで見落とされやすいのが、「切り捨て」と「切り上げ」がセットになっているという点です。30分未満なら切り捨て、30分以上なら切り上げ。どちらにも振れるから、常に労働者の不利にはならない——だから事務の簡便として認められている、という整理です。切り捨てだけを行い、切り上げをしない運用は、この例外の範囲から外れます。

1日ごとの勤怠票の端を毎日削っていく様子と、1か月分をまとめて集計してから一度だけ調整する様子を左右に並べた対比図
丸めていいのは「1か月の合計」に対して。1日ごとに削っていく処理は、この例外に当てはまらない

そしてもうひとつ大事なのが、この例外が使えるのは時間外・休日・深夜の時間数に対してだけだということです。法定労働時間の内側にある通常の所定労働時間については、この端数処理は認められていません。所定内は1分単位のままです。

なお、勤怠記録そのものについては、厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」が、始業・終業時刻をタイムカードやパソコンの使用記録などの客観的な記録を基礎として確認・記録するよう求めています。記録は実際のとおりに残したうえで、認められた範囲の端数処理を集計の段階で行う——この順番になります。

具体例:1日ごとの切り捨てと、月合計の処理を並べてみる

言葉だけだとイメージしにくいので、数字で見てみます。時間外労働が発生した3日ぶんを取り出して、「1日ごとに15分単位で切り捨てた場合」と比べてみましょう。

実際の時間外労働15分単位で切り捨てた場合
8月3日1時間52分1時間45分−7分
8月4日42分30分−12分
8月5日2時間8分2時間0分−8分
3日の合計4時間42分4時間15分−27分

たった3日で27分の差が出ました。切り捨てられる時間は1日あたり0〜14分なので、平均すると1日7分ほど。20日ぶんなら140分、つまり月におよそ2時間20分が集計から落ちる計算になります。

金額にすると、割増賃金の基礎となる1時間あたりの単価が1,500円の会社で、時間外の割増率25%(1時間あたり1,875円)とした場合——

一方、認められている「1か月の合計に対する端数処理」だとどうなるか。同じ月の時間外労働の合計が 28時間47分 だったなら、47分は30分以上なので 29時間 に切り上げます。合計が 28時間20分 なら、20分は30分未満なので 28時間 に切り捨てます。丸めが起きるのは月に一度だけで、しかも切り上げ側にも振れます。

同じ「端数処理」という言葉でも、1日ごとに削るのと、月に一度だけ調整するのとでは、結果がまったく違ってきます。

遅刻・早退の側にも同じ考え方があります

出勤の側でも、似た運用を見かけることがあります。「5分の遅刻でも15分ぶん控除する」といった扱いです。

ここは少し性質が変わります。実際に働かなかった時間を超えて賃金を控除すると、その超えた部分は「減給の制裁」として扱われ、労働基準法第91条の制限(1回の額が平均賃金の1日分の半額以内、総額が一賃金支払期の賃金総額の10分の1以内)を受けることになります。就業規則に懲戒として定めがないまま行うと、根拠のない控除になってしまいます。

遅刻・早退の控除も、原則は実際に働かなかった時間ぶん。ここも1分単位で考えるのが基本になります。

影響:後からまとめて直すほうが、ずっと大変になる

15分単位の切り捨てが続いていると、いちばん重くなるのは「後から精算するとき」です。

逆に言えば、今の月の給与計算から1分単位に切り替えてしまえば、それ以上は積み上がりません。過去の扱いをどうするかは、規模や期間によって判断が分かれるところなので、社会保険労務士や所轄の労働基準監督署に相談しながら決めるのが安心です。まずは「今日から先を止める」だけでも、十分に意味のある一歩です。

明日やること(まずはここだけ)

全部を一度に整える必要はありません。順番に、小さく進めましょう。

  1. 勤怠システムの丸め設定の画面を開く。 「時間の丸め」「端数処理」「集計単位」といった名前の設定項目を探して、単位(1分/5分/15分/30分)と方向(切り捨て/切り上げ/四捨五入)をメモします。
  2. 切り上げなのか切り捨てなのかを確認する。 労働者に有利な切り上げなら、急いで直す必要はありません。ここで一度、落ち着けます。
  3. 1人ぶんだけ、1分単位で集計し直してみる。 直近1か月ぶんで構いません。差がどのくらい出るかがわかると、社内で話をするときの材料になります。
  4. 就業規則・給与規程の端数の条文を読み返す。 規程に「15分単位」と書かれている場合は、システムの設定だけでなく規程の見直しもセットになります。
  5. 切り替える月を決めて、社内に伝える。 「◯月ぶんの給与計算から1分単位になります」と一言あるだけで、現場の混乱が減ります。

チェックリスト(現場用:最低ライン→優先→代替→免除)

よければ、こちらも

端数処理の前提になる考え方は、労働時間の把握義務と客観的な記録労働時間に含まれる時間の判断を見ておくと、そもそも何分を数えるのかがはっきりします。丸めたあとの計算は残業代の割増率の計算、控除の側は欠勤・遅刻早退控除の計算方法で整理しています。毎月の段取り全体は給与計算の基本の流れにまとめました(記事一覧)。

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勤怠の集計単位を1分単位に切り替え終えて、画面を前に肩の力が抜けて穏やかにほほえんでいる労務担当者
設定をひとつ直すだけで、来月からの数字が素直になる。それは十分に大きな一歩です

労働時間の端数処理は、知らないと気づけないところです。誰かが手を抜いた結果ではなく、引き継ぎと初期設定が積み重なって、そのまま動いていただけ。だから、見つけたことを自分の落ち度のように受け取らなくて大丈夫です。

直し方も、実はシンプルです。設定の単位を1分にする。それだけで、来月からの数字は素直になります。

気づいて、設定画面を開いたところまで来たのなら、いちばん難しいところはもう越えています。あとは、順番に整えていきましょう。


本記事は一般的な実務情報です。労働時間・賃金の取扱いは、個別の事情や法改正、就業規則・給与規程の定めによって変わります。最終的な判断は、社会保険労務士・所轄の労働基準監督署など最新の公式情報でご確認ください。

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