
育児休業給付金の申請の流れ|支給額の計算と延長のときの必要書類
「来月から育休に入ります」。 従業員からそう聞いたとき、おめでとうという気持ちと一緒に、「給付金の手続き、私がやるんだよな……」と少し肩に力が入りますよね。産休のときは健康保険、育休は雇用保険。窓口も書類も変わるうえに、申請は一度で終わらず2か月ごとに続きます。しかも「保育園に入れなかったら延長できるらしい」という話まで出てくる。何から手をつければいいのか、迷って当然の手続きです。
育児休業給付金は、雇用保険に入っている人が育児休業を取ったときに、休んでいる間の生活を支えるための給付です。申請の窓口になるのは、本人ではなく会社(事業主)。つまり、この手続きの進み具合はあなたの手にかかっています。とはいえ、やることは「最初に受給資格を確認して、あとは2か月ごとに同じ作業をくり返す」だけ。この記事では、条件・金額・申請サイクル・延長の書類を、順番に一緒に確認していきましょう。
結論:育児休業給付金は、休業開始日前の2年間に「賃金支払基礎日数11日以上(または就業時間80時間以上)の月」が12か月以上ある人が対象です。金額は休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%(育休の開始から通算180日目まで。181日目以降は50%)。申請は会社が管轄のハローワークへ、原則2か月に1回まとめて行います。初回の期限は育児休業開始日から4か月を経過する日の属する月の末日なので、まずはこの日付をカレンダーに入れるところから始めれば大丈夫です。
進めるときは、次の順番だと迷いにくくなります。
- 育休の開始日を確認し、「開始日から4か月を経過する日の属する月の末日」=初回申請の期限をカレンダーに入れる
- 初回に必要な書類(受給資格確認票・支給申請書、休業開始時賃金月額証明書、賃金台帳・出勤簿など)をそろえてハローワークへ出す
- 以降は2か月ごとに、ハローワークから返ってくる次回分の申請書に記入して提出する
何が起きているか:育児休業給付金は「育休中の生活」を支える雇用保険の給付
育児休業給付金は、雇用保険の被保険者が、原則1歳未満の子を養育するために育児休業を取ったとき、休んでいる期間について支給される給付です。健康保険から出る出産手当金とは制度も窓口も別で、こちらはハローワーク(雇用保険)が窓口になります。
受給できるかどうかは、主に次の条件で見ます。
- 休業開始日前の2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある月(11日以上の月が12か月ない場合は、就業した時間数が80時間以上の月)が通算12か月以上あること
- 育児休業期間中の各1か月(支給単位期間)ごとに、就業日数が10日以下であること(10日を超える場合は、就業時間が80時間以下であること)
- 有期契約の人は、子が1歳6か月に達する日までに労働契約が満了することが明らかでないこと
支給単位期間って?:育児休業の開始日から1か月ごとに区切った期間のことです。たとえば5月10日に育休開始なら、5月10日〜6月9日が1つ目、6月10日〜7月9日が2つ目……と続きます。給付金は、この1か月のかたまりごとに「支給されるかどうか」「いくらか」を判定します。月末締めの給与計算とは区切りが違うので、ここは最初に頭を切り替えておくと混乱しません。
対象になる期間は、原則として子が1歳に達する日の前日までです。パパ・ママ育休プラスを使う場合は1歳2か月まで、保育所に入れないなどの事情があれば1歳6か月・2歳まで延ばせます(延長は後ほど詳しく)。
もうひとつ、実務でよく聞かれるのが「育休中に少しだけ働いてもらえますか?」という相談です。上に書いたとおり、就業日数が10日以下(または80時間以下)であれば給付金は受けられます。ただし、支払った賃金の額によっては減額されるので、働いてもらう前に本人と条件をすり合わせておくと安心です。
- 支払った賃金が、休業開始時賃金月額の13%以下(50%の期間は30%以下)→ 給付金は満額
- それを超えて80%未満 → 賃金月額の80%相当額と、支払った賃金との差額が支給
- 80%以上 → その期間は不支給
具体例:支給額はどうやって決まる?
金額は、次の式で求めます。産休中の出産手当金(3分の2)とは計算のもとが違うので、混ぜないように気をつけたいところです。
- 休業開始時賃金日額 = 育児休業開始前6か月間の賃金総額 ÷ 180
- 支給額 = 休業開始時賃金日額 × 支給日数(通常は30日)× 67%(育休の開始から通算180日目まで)
- 181日目以降 = 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 50%
たとえば、育休前6か月の賃金総額が180万円だった人なら、180万円 ÷ 180 = 1万円が休業開始時賃金日額です。1か月(30日)あたりの給付金は、
- 開始〜180日目:1万円 × 30日 × 67% = 20万1,000円
- 181日目以降:1万円 × 30日 × 50% = 15万円
が目安になります。ここでいう「賃金総額」には、通勤手当や残業代などの各種手当も含み、賞与は含みません。
上限額・下限額に注意:休業開始時賃金日額には上限と下限があり、毎年8月1日に見直されます。賃金の高い人は上限で頭打ちになるため、計算どおりの額にならないことがあります。本人に金額を伝えるときは、「おおよその目安です」と一言添えて、確定額はハローワークからの支給決定通知で確認してもらうのが安全です。最新の上限額・下限額は、ハローワークインターネットサービスや管轄ハローワークの案内でその都度確認しましょう。
なお、育児休業の期間は社会保険料(健康保険・厚生年金保険)が免除になり、給付金そのものも非課税です。「給料の67%しかもらえないのか」と不安がる人もいますが、社会保険料と所得税が引かれない分、手取りベースで見ると差はもう少し小さくなります。保険料免除の手続きは「産休・育休の社会保険料免除|申出書の書き方と手続きの流れ」にまとめているので、給付金の申請とセットで進めると漏れがありません。
2025年4月から始まった上乗せの給付:子の出生後の一定期間内に、本人と配偶者がともに14日以上の育児休業を取得した場合などに、最大28日間、休業開始時賃金日額の13%が上乗せされる「出生後休業支援給付金」が創設されました。67%+13%=80%となり、社会保険料の免除と非課税をあわせると、休業前の手取りとほぼ同じ水準になる設計です。また、2歳未満の子を養育しながら時短勤務をする人向けの「育児時短就業給付金」も始まっています。配偶者が就業していない場合など、ひとりの取得でも対象になるケースがあるので、該当しそうな人がいたら管轄ハローワークに確認してみてください。
影響:申請するのは本人ではなく「会社」

育児休業給付金は、原則として事業主(会社)が本人に代わって、管轄のハローワークへ申請します。傷病手当金や出産手当金のように「本人が出して、会社は証明欄を書くだけ」ではありません。ここが、ひとり労務にとっていちばん負担に感じるところだと思います。
初回に用意する主な書類は、次のとおりです。
- 育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書
- 雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書(育休前6か月の賃金を記載)
- 賃金台帳・出勤簿(タイムカード)など、上の2枚の記載内容を確認できる書類の写し
- 母子健康手帳の写しなど、出産日・育児の事実がわかる書類
- 本人名義の振込先口座が確認できるもの
初回の提出期限は、育児休業開始日から4か月を経過する日の属する月の末日です。たとえば5月10日に育休が始まったなら、9月10日を含む月=9月30日が期限になります。少し余裕があるように見えますが、賃金台帳と出勤簿をそろえる時間も要るので、育休開始の連絡を受けた時点で期限だけカレンダーに入れておくと安心です。
2回目以降は、原則2か月に1回(支給単位期間2つ分をまとめて)申請します。初回の手続きが終わると、ハローワークから次回の支給申請書と、提出期限が書かれた通知が返ってきます。この期限どおりに出していけば大丈夫なので、ここまで来ればあとは同じ作業のくり返しです。書類が届いたら、その場で次回期限を予定表に転記する——それだけで、うっかりを防げます。
電子申請という選択肢:育児休業給付の申請は、e-Gov(GビズID)を使った電子申請にも対応しています。2か月ごとに窓口へ行く・郵送する手間が続く手続きなので、育休を取る人が増えてきたタイミングで一度検討してみる価値はあります。ただ、いま紙で回っているものを無理に変えなくても大丈夫です。まずは目の前の1回を確実に出すことを優先しましょう。
延長するとき(1歳6か月・2歳)に必要な書類
保育所に入れなかった場合などは、給付金の対象期間を1歳6か月まで、それでも入れなければ2歳まで延ばせます。ひとり労務が慌てやすいのが、この延長の場面です。
延長が認められる主な理由は、次のようなものです。
- 保育所等(認可保育所など)への利用申込みをしているのに、当面その実施が行われないとき
- 子を養育する予定だった配偶者の死亡・負傷や疾病・婚姻の解消による別居・産前産後など、養育が難しくなったとき
このうち圧倒的に多いのが「保育園に入れなかった」ケースです。ここで押さえておきたいのが、2025年4月から、延長の手続きで確認される内容が変わったことです。「速やかに職場復帰するために保育所等の利用を希望していたか」が、あらためて確認されるようになりました。必要な書類は次のとおりです。
- 育児休業給付金支給対象期間延長事由認定申告書
- 市区町村へ提出した保育所等の利用申込書の写し
- 市区町村が発行した入所保留通知書(不承諾通知書)
つまり、以前は入所保留通知書が中心だったところに、申込書そのものの写しが加わりました。申込内容から「本当に通える保育所を申し込んでいたか」も見られるため、たとえば自宅や勤務先から通えないほど遠い施設だけを申し込んでいたようなケースでは、延長が認められないことがあります。
ここは、責める話ではありません。会社としてできるのは、育休に入る時点で本人に「延長する可能性があるなら、申込書の写しを必ず手元に残しておいてください」と伝えておくことです。市区町村に出したあとで写しを取り直すのは大変なので、この一言があるかどうかで、半年後の負担がずいぶん変わります。
申請のタイミング:延長の申請は、子が1歳に達する日の翌日を含む支給単位期間の支給申請とあわせて行います。保育所の結果が出るのは入所希望月の1〜2か月前が一般的なので、「1歳の誕生日が近づいたら結果通知の有無を本人に確認する」と決めておくと、期限に追われずに済みます。1歳6か月から2歳への再延長も、同じように書類をそろえて申請します。
明日やること(まずはここだけ)
一度に全部を進めようとしなくて大丈夫です。今日できる小さな一歩から始めましょう。
- 育休開始日から「4か月を経過する日の属する月の末日」を計算し、カレンダーに入れる:初回申請の期限はここだけ押さえれば十分です。
- 育休前6か月分の賃金台帳と出勤簿を1つのフォルダにまとめる:休業開始時賃金月額証明書はこの2つがあれば書けます。先にそろえておくと、申請日にあわてません。
- 本人に「保育所の利用申込書の写しは必ず残してください」と伝える:延長するかもしれない人には、育休に入る前の今のうちに。これが一番効く一手です。
この3つだけで、育休の給付手続きの骨組みができます。あとはハローワークから返ってくる次回申請書の期限を、そのつど予定表に写していくだけです。
チェックリスト(コピーして使えます)
育児休業給付金の手続きでつまずかないための確認項目です。
- 休業開始日前2年間に、賃金支払基礎日数11日以上(または80時間以上)の月が12か月以上あるか確認したか
- 有期契約の人は、子が1歳6か月までに契約満了することが明らかでないか確認したか
- 初回の申請期限(育休開始日から4か月を経過する日の属する月の末日)をカレンダーに入れたか
- 休業開始時賃金月額証明書の記載と、賃金台帳・出勤簿の内容が一致しているか
- 支給率が180日目まで67%・181日目以降50%で切り替わることを、本人に伝えたか
- 育休中に働いてもらう予定があるなら、就業日数10日以下(または80時間以下)と賃金による減額を本人と確認したか
- 社会保険料の免除の申出も、あわせて段取りしたか
- 出生後休業支援給付金・育児時短就業給付金の対象になりそうか、あたりをつけたか
- 延長の可能性がある人に、保育所等の利用申込書の写しを残しておくよう伝えたか
- 2回目以降は2か月ごとであることを押さえ、次回期限を予定表に転記する運用にしたか
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育児休業給付金は、2か月ごとに書類が戻ってくる、少し息の長い手続きです。だからこそ、最初に期限をカレンダーに入れて、賃金台帳をまとめておくだけで、この先の半年がずいぶん楽になります。制度が変わるたびに書類が増えて、正直「また覚え直しか」と思う日もありますよね。それでも、あなたが今日この記事を開いて確認しようとしているから、育休に入る人は安心して子どもと過ごせます。全部を一度に覚えなくて大丈夫。次の1回を確実に出すことだけ考えれば、それで十分です。
本記事は一般的な実務情報です。育児休業給付金の支給要件・支給率・上限額・延長の取扱いは、個別の事情や法改正によって変わることがあります。最新の上限額や必要書類、電子申請の手順は、ハローワークインターネットサービス・厚生労働省の案内や管轄のハローワークでご確認のうえ、判断に迷う場合は社会保険労務士・所轄のハローワークなど公式の窓口にご相談ください。